凍えるような金属の匂いがしました。
少年は、壊れた宇宙船の片隅で目を覚まします。
薄暗い非常灯だけが、ぼんやりと周囲を照らしていました。
隣に、奇妙な男が座っていました。
彼は、真っ白な下着姿です。
痩せこけた体には、無数の傷跡が走っていました。
少年は恐る恐る尋ねました。
「あなたは、だれですか?」
男はゆっくりと顔を上げます。
その瞳は、深遠な宇宙の色をしていました。
「私は下着マン」
声は、ひどく掠れていました。
「この星の、最後の記憶だ」
少年は息を飲みます。
彼の知る地球は、もうありませんでした。
遥か昔、青い星は、宇宙の塵と消えたと教えられていたのです。
「地球は、どうなったのですか?」
下着マンは、遠い目をして語り始めました。
それは、壮絶な戦いの物語でした。
人々が、希望と絶望の間で叫んだ日々の記録です。
そして、彼は言いました。
「私は、あの星の『悲哀』を身に纏っている」
彼の全身から、目には見えない重苦しい空気が漂うようでした。
救えなかった命。
果たせなかった約束。
全てが、下着マンの存在そのものだったのです。
彼は、その悲哀を宇宙の果てまで運ぶために、この船に乗っていたのだと。
役目を終えれば、自分も星と一つになる、と。
少年は、下着マンの手を握りました。
冷たい皮膚でした。
「僕も連れて行ってください」
「僕も、地球の悲哀を知りたい」
下着マンは、かすかに微笑みました。
そして、ゆっくりと少年の手を引きます。
操縦席には、古びた地図が広がっていました。
宇宙船は、静かに動き出しました。
目的地は、どこにもありません。
ただ、下着マンが背負う悲哀を抱きしめ、少年は新たな航海に出たのです。
遠く、きらめく星々が、二人の旅を見守っていました。
それは、地球の、そして下着マンの最後の涙のように見えました。